主に罪側の舞耶に関する考察。罰舞耶も考察したいけどセリフない考察も難しい。
そもそも私から見れば罪は「達哉視点の舞耶+他のキャラの物語」罰は「舞耶視点の達哉+他のキャラの物語」という構造なので、舞耶というキャラの物語は罪の時点でほぼ完成に近い状態だと思いました。
ちなみに、達哉も考察する予定があります。
----------------------------まずは舞耶の公式設定をご覧ください。
罪の舞耶は、元祖仮面党の子供たちから崇拝されたり女神扱いされたりして、そのせいなのか女性ユーザーの反感を買うことも多い印象。
でも、本当は女性の強みと弱みをよく体現していたキャラで、そのリアルさに私は親近感を覚えます。
繊細でよわくて、でも周りは年下だからすごく気を張っている。前向きな言行動+後ろ向きな性格、それが舞耶。
彼女の「ポジティブシンキング」って口癖も、人に言いながら自分に言い聞かせてる言葉なんですよ。
罪舞耶のキャラを解説するには、注目すべきポイントは二つあります。
一つは(ユングの)ペルソナの意味通り、無理にお姉さんであろうとしている部分、もう一つはシャドウ舞耶のポジション。
----------------------------舞耶のペルソナチェンジ
心理学用語のペルソナとは、外的な現実(あるいは社会)に対して適応した態度/界に適応するための社会的・表面的な人格のこと。子どもですら複数の「仮面」を持っていますから、社会人は社会に適応するために、もっともっとたくさんの「仮面」を持つようになります。
1、2の場合は、システムとシナリオ両方で「外界に適応する仮面」というペルソナの意味を表現したと私は思っています。
罪の公式本によるペルソナの解説
RPGには戦闘システムが必要、だからゲームシステム上は「悪魔元型には悪魔元型で対抗する」という形でペルソナの境遇に適応する機能を表現した。でも、ペルソナの種類ははこれだけではない。
悪魔や神のように超能力を持つ人格だけではなく、「会社用の仮面」とか「家用の仮面」とか、他にもまだまだたくさんあります。
シナリオ上では、1(異聞録)は「自分の影から逃げない」(セベク編の話の主軸は少年少女たちの冒険でもあり、「麻希と麻希の影たちの物語」でもあります)、「辛い現実から逃げない」(ゆきの女王編、エリーの台詞「人間とはどんなにつらくても生きている限り“現実”という砂漠を行く旅人」が印象的)ことで、ペルソナを通じてキャラたちは自分のアイデンティティを確立できてる。
これはペルソナ2も同じ、罪の子供も、罰の大人も、みんな悩んで迷って、色々な事を感じながらも、自分という存在をちゃんと確立できた。
社会や人生という大きいな舞台において、ペルソナという仮面をかぶり自分のキャラはなに?
自分は何になる、何が出来る、どんな演目をする?自分は望む通りの役を演じることができますか?
その答えはペルソナを探す行動に表れていると思います。
具体的に言うと
専用ペルソナの入手=精神的な自立、即ち自我の確立。
(1、2でペルソナ使いになる条件はフレィモンの前に自分の名前を名乗ることが出来ること。意識と無意識の狭間で名乗ることが出来ることは、自分をしっかり持っている証拠。そうでないと逆にペルソナに支配される可能性もある。)
初期専用ペルソナ=今の自分、他人に対する振る舞い
後期専用ペルソナ=未来のあるべき姿
システム上の専用ペルソナを探す行動は、シナリオ上の「自分を探す」を象徴するイベントだと思います。自分のあるべき姿に悩んでいる人は、うららだけじゃないですから。
とりあえず、ユングのペルソナの場合、誰でも複数のペルソナを持ち、場に応じてチェンジできます。
*3以降のペルソナは設定からすでにユングのペルソナの最大の特徴を失って、完全ゲームオリジナルとして考えた方がいい。
5のペルソナの特徴についてモルガナの説明は「心は一人に1つだから、ペルソナも普通一人1体」、これはもはや完全ゲームオリジナル。
システム上のペルソナチェンジ:様々な敵に適応するためにキャラがペルソナを変えること
シナリオ上のペルソナチェンジ:キャラがその場に相応しい態度を取ること。相手によって対応が変わるだけでキャラの本質は変わってない。
例えば、罪の達哉目線の克哉と罰の舞耶目線の克哉。達哉の前の克哉は「兄」のペルソナを被り、舞耶の前だと「歳の近い男性」のペルソナにチェンジ。
女性3人のお色気コンタクトもこれに当てはまります。一人でお色気コンタクト出来るのは若い子のリサのみ、でも3人だと「信頼しながらも競い合う、微妙な乙女心」になる。
これは舞耶、うらら、エリー一人の場合多分恥しくてできないでしょう。でも女子3人一緒にやると平気(笑)
これもその場に相応しい態度を取ること。人間のこういう周りに釣られたぁ~という「空気を読む」行動は、集団の中に居るには不可欠なコミュニケーション。
だから、罪舞耶と罰舞耶も、罪克哉と罰克哉も、本質的に同じ人だと思います。
罪の場合、年下の前では年上だと自覚しているので『お姉ちゃん』仮面を被って世話する側に回り込む、これが舞耶のペルソナチェンジ。人は皆仮面を被って生きているので、本来はとても普通なことだけど、罪舞耶の場合、周りは年下の子ばかり+その子たちから女神扱されるから、ありのままの自分でいられない、実はかなり抑圧されていたんです。
抑圧されていた分、舞耶のシャドウも他のキャラのシャドウより強烈。
それが罰では開放されて、言葉は少なくなっても罪より生き生きしてるように見えました。少なくとも私にはそう見えました。
----------------------------アルカナから見た舞耶の本質
タロット占いにおいて月の意味は、不安定、幻惑、現実逃避、潜在する危険、欺瞞、猶予ない選択、曖昧な状況や不安定な心理状況、悲観的な考えを意味します
そして寓画の解釈は月の女神カードに描かれた人面の月は母性的な印象を感じさせます。様々な絵画の中で月が女性像と共に描かれるなど女性や女神の象徴として扱われた事から、月を「女性存在」の直接的暗示と置いて解釈される場合があります。
対応星座:巨蟹宮 この星座の星座記号は「母性の回転」を意味し、守護星は女性を表す「月」、四大元素は「水」を司ります。
そして天体としての月は、明るい面ばかりを人に見せて決して裏側を見せません。これは舞耶も同じ。
人前では前向きに、でも一人になると落ち込みやすい。
舞耶の天然さは確かに本性、いわゆる自然体です。まあこれについて金子先生も公式本で「天然」の一言。でも、自然体でいられるには、彼女の天然さを受け入れる環境いわば人が必要。
だから、罪の舞耶の天然な言動は、殆んどゲーム前半のゆきのさんとコンビを組む時が多いんです。
舞耶「そう言えば、台風って家族連れで来るんだって!ユッキー、知ってた?!」ゆきの「それって台風一過のコトじゃ…。」
舞耶「放火魔を見たらすかさず…ほら、ユッキーも!」ゆきの「ちょ、ちょっと舞耶さん!よしなって恥ずかしい。」
など、毎回毎回ボケとツッコミのコンビ。
中盤以降の舞耶はあまりボケしない…確か科学館と天の川の時の2回だけ?全部乗物関連だし、そしてあまりウケがよくなかった(笑)交渉コマンドの漫才コンビも、ゆきのさんと組まされたときは舞耶がボケ役で、栄吉、リサと組まされたとき舞耶がツッコミー役。
ゆきのさんが去ったあと舞耶はこう言いました「ユッキーは仕事のパートナーというより、本当の親友だった。いつも私を応援してくれてて、呆れながら私を支えてくれてた。うふふ、年下なのにまるでお姉さんが出来たような気がしたわ。」
そう、頼りがいのある人がいるとつい甘えたくなり、ツッコミしてくれる人がいるとボケしたくなります。これもペルソナという、外的な現実に対して適応した態度。
罪前半の舞耶の天然っぷりは、ゆきのさんと言う支えが居たからこその言動。だからゆきのさんが去った以降、みんなのお姉さん役を背負って天然キャラから一転して達哉以上のリーダーシップを発揮する。
罪の高校生メンバー(恐らく当時多くのプレイヤーも彼らと同じ歳)にとって、23歳の舞耶はまさに「大人」で「お姉さん」であり、皆を照らす夜空の月みたい。
しかしよく考えてみれば舞耶はまだ23歳で、十分若い年齢です。
対して罰の舞耶は、周囲が大人だから自然体でいられます、無理に気を張っている印象はありません。言葉は少なくなりますが実はこちらのほうがニュートラルな印象。
だから里見さんが公式本でこうおっしゃっていました
罪舞耶も罰舞耶も、結局その場にふさわしい態度を取っただけです。
----------------------------月の裏側
舞耶のキャラ理解には、もう一つ重要な手掛かりはシャドウ舞耶。
達哉や栄吉、リサ三人のと、それぞれのシャドウとのやり取りを見る限り、誇張はあるけどシャドウは嘘をつきません。
そしてシャドウ達哉曰く「お前の心は、手に取るようにわかるぞ…」=シャドウ舞耶は誰よりも舞耶の心を理解しています
ならば、嘘をついているのは舞耶の方でしかない。
*タロット占いにおける月の「現実逃避、欺瞞」って意味を思い出してください。
「この世で一番都合がいい言葉って、なんだかわかる?"ごめんなさい"よ。言われた方は、どんなに辛くても憎くても、許さざるをえない…自分が罪から逃れる為に、相手に苦しみの全てを棚上げするこの世で一番汚い言葉…」
「何もなかったことにできたら、人生どれだけ楽かしらね?でも、忘れられる方にしたら、たまったもんじゃないと思わない?」
シャドウ舞耶の言葉は、すべて舞耶の本当の気持ちを代弁してくれると思います、誇張はあるけど決して嘘ではありません。
『舞耶は明るく活発で、誰でも好かれる性格です。だが、心の底には幼い頃に父に必要とされず、愛されなかったという悲しい思いがわだかまっています。
彼女が幼いころに感じたその悲しみは、大人になった現在、激しい感情に変換され表層にあらわれることがあります。
舞耶の象徵には、表と裏の姿をもち。満ちかけをして形を変える月がふさわしいといえよう。
』 (ペルソナワルードガイダス)
『自分が父に必要とされてないと傷ついた。その心の傷ゆえに、必要以上に他人に必要とされたいと思うようになった。』
(
ペルソナ2 公式ガイドブック完全版)
これらの公式資料を見れば分かる、舞耶にとって子供たちに忘れられる事は、そう簡単に許せるものではないはず。
だから「忘れられる方にしたら、たまったもんじゃないと思わない?」はまさに舞耶の本音。
でも、そこがいいんです。
舞耶は聖人でもなければ女神でもありません、人間ですから。
ですから、他のシャドウに比べたらシャドウ舞耶はかなり異質な存在である
他のシャドウの悪意は本人に向かうに対して、シャドウ舞耶の悪意は明らかに子供たちに向かっています。
ユング心理学において、ユングはシャドウを「自分がなりたくないと思うもの」「苦手なものや生き方」と定義しています。
他人に必要とされたいと思う舞耶にとって、子供たちに罵言雑言浴びせるシャドウ舞耶はまさに「自分がなりたくないと思うもの」、だから、絶対に認めるわけがありません。
---------------------------舞耶はいつから、10年前のことを思い出したの?
アラヤ岩戸にて舞耶は「ここに来るまでに…あの泉のおかげで、全部思い出したわ」と言いましたが、あくまで「全部」ですね。
私の推測ですが、まず、科学館の炎中で達哉の記憶がフラッシュバックしたイベントがあるよね、恐らく達哉とともに、舞耶の記憶もよみがえってきたりするのです。
死んだ須藤にしがみついて(達哉に止められたほど)口調も荒々しくなり舞耶らしくない反応。10年前のことに対して強い関心が見られます。
リサたちを憎むようになってしまった瞬間だと思います、そしてその気持ちはそのままシャドウ舞耶に伝わるのでしょう。だから次のイベントはシャドウ舞耶のご登場。
ここの長い沈黙本当に意味が深いんです。ちなみに2回目もあります。
シャドウ舞耶を倒した後、舞耶はこう言いました
「ごめんね…みんなのこと忘れてて…本当に、ごめんね…!!」(忘れられたのは舞耶の方なのに)
「また会えたことを感謝しても、恨んだりなんてしない…むしろ、私の方こそ…」(許せない。でも、相手は謝っている…だからそう言わざるを得ない)
舞耶は嘘をついていますね、タロット占いにおいて月の意味通り。
おそらく、ラストバトル前のニャルとのやり取り
舞耶「誰かをこんなに憎いと思ったのは、初めてよ…許さないわ…絶対に!!」
ニャル「矛盾だな。何者をも許す広い心が、お前の専売特許ではないのか?」
ここのニャルの台詞もこのことへの皮肉をこめたでしょう、
「私を許せないだと?矛盾だな。」よりも「何者をも許す広い心が、お前の専売特許ではないのか?(子供たちを憎んでいるくせに」の方が皮肉が効いててニャルらしいから。
だから、彼女は女神でもみんなのお姉さんでもない、繊細で傷つきやすくて普通な女です。
---------------------------誓いという名前の枷
罪のジョーカー戦後の
舞耶
「淳クン…これが私の気持ちよ(ネモフィラの花)…
約束するわ…たとえ、誰がキミを責めても…世界中を敵に回しても…私が誓いを守るから…」
実はここずっとずっとひっかかってたんですが。
まるで愛の誓いみたい。いくら舞耶とはいえ「世界中を敵に回しても私が誓いを守る」って言いすぎたじゃない?
ネット上のキャラ考察も「性格は明るく前向きであるが、他人の弱い部分に寛容であろうとしたり、また「罰」においては全てを拒絶し1人で戦おうとする達哉を受け入れるなど、達哉とは正しい意味で対となるような優しさを持つ。 「罪」ではカラコルでジョーカーの呪縛から解き放たれた淳に、途中の豪傑寺で摘んできたネモフィラの花(花言葉:私はあなたを許す)を渡したり、「罰」では岩戸山で「向こう側」の記憶を取り戻したとき、それでも1人で戦おうとする達哉に対しての対応(叩くのか、抱きしめるのか)などにその優しさが顕著に現れる」とこのセリフを舞耶の優しさとして解釈した。
でも、本当にそれだけのことでしょうか。
大体この時点で、これまでジョーカーという加害者だった淳にとって一番必要なのは「誓い」ではなく被害者たちからの「許す」の言葉ではないでしょうか。
「あなたを許す」で十分。なのに「世界中を敵に回しても私が誓いを守る」ってちょっと話の重点がずれている感じ。
私から見れば、この「誓い」を必要とするのは淳ではなく舞耶自身ではないでしょうか。
このイベントは岩戸山イベントのちょど後。岩戸山でシャドウ舞耶に心の中の憎しみを暴露され、直後のイベントで自分を監禁した一人の淳との対面。
舞耶はそんな感情を許さない、でも憎しみは確かに存在する。だから、自分で自分に誓いという枷をはめるではないでしょうか。
もう「あなたを許す」と誓ったから、これから先何があっても淳を許さざるをえないんですから。
だからニャルの「何者をも許す広い心が、お前の専売特許ではないのか?」は皮肉の効いた言葉。
舞耶は、何者をも許す広い心を持つから淳を憎んでいないのではなく、 本性は優しいから淳を憎む感情を許せない、だから枷となる「誓い」が必要です。
でも、それこそ舞耶の本当の優しさだと思うんです。
これを裏付ける証拠は、この後獅子宮の神殿でシャドウ達哉の「本当は黒須のことも、憎くて仕方ないはずだ」に対して
「憎んで…いるかもしれない…だ。」を選択した場合の舞耶の沈黙。
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淳
「達哉…僕は憎まれて当然だ…どんなに憎んでくれてもかまわない…
でも今は、達哉の力がなければ、あの子達の両親や街の人を助けることができないんだ…
こんなこと言える立場じゃないけど…この戦いが済むまでは、力を貸して下さい…お願いします…」
舞耶
「…………。」
栄吉
「淳、土下 座する必要なんてねぇ…俺たちゃ仲間じゃねぇか。
タッちゃん…ちっと見損なったぜ…」
ギンコ
「そんなのウソに決まってるよ!!ねぇ…達哉!!ウソだよね!?」
舞耶
「さ、達哉クン…そろそろ…」
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この場面のみんなの反応は、ちゃんとそのキャラの「今一番関心のあること」を表現してとても興味深い。
淳はジョーカーとして犯した罪を償いたいから、彼にとって今一番関心のあることは子達との約束。
栄吉君は元番長で義理を重んじる人だから、今一番関心のあることは仲間の結束。仲間だからなんでも許せる、罰でも「そりゃアイツ(杉本)のせいで、どエライ目に会ったけど、ほっとけない っしょ。俺は番長すからね。」と言いましたから。
リサは何時でも一番関心のあることは達哉だから、ここの反応も「私の達哉がこんなことを言ったはずがない、ウソに決まってる」と一番気になるのは達哉の言葉と自分の中の達哉像とのギャップ。
そして舞耶の長い沈黙。これで2回目。
本当に「何者をも許す広い心」を持つならば栄吉と同じく淳を庇うはず。でも結局彼女は何も言わなかった。
そりゃそうでしょう、彼女は一番の被害者だからそんな簡単に許せるわけがない。
ちなみに「憎んでなどいない」を選択する場合シャドウ達哉から「たいそうな偽善者だ…でなければ、よほど完成された人格をお持ちのようだ。」と言われる。
結論 として、本当に「何者をも許す広い心」を持つのは舞耶ではなく栄吉君かもしれません。
淳のことも憎くて仕方ないからここで沈黙するしかない。そしてそんな淳を憎む自分を許せないから、枷となる「誓い」が必要。
そんな舞耶は、偽善者でもなければ聖人でもない普通の女です。
そして「世界中を敵に回しても私が誓いを守る」してまで自分の中の憎しみを殺そうとする舞耶が、とても愛しく見えます。
でも結局、舞耶の気持ちに子供の誰も気づかなかった。無理もない、あの明るいお姉ちゃんが、実は後ろ向きな性格なんて誰も思わないでしょうね。
---------------------------舞耶の最後の言葉について
「みんな、私のことは早く忘れなさい」のあれ。
本当にこれは舞耶の本心でしょうか。忘れたくないからあえて忘れなさいでしょうか。
私は、舞耶の言葉に偽りはないと思います。
以下、台詞から舞耶を考察します(一部は同士さんメモから引用)
コンタクトコマンド ・親子を語る
「親子の絆って、何よりも強いものよ…」
「お父さん、お母さんを大切にしよう!!」
「親孝行したい時に親は無し…本当よね…お父さん…」
舞耶の悩みの原因は父との関係、父が帰らぬ人となっていた今、親孝行したい時に親は無し。
・シルバーマン邸にて
「リサ、お父さんとはあまり仲が良くないみたいね…父親がいるだけでも、ずっと幸せなのに…」
「お父さん…私のお父さんも…家を守る人でいてほしかったな…」
心理的離乳期って言葉があります、舞耶は歳的にもう大人だけど、父への依存は他の子供と変わらない。だからラスボスのグレートファーザーに舞耶の父もいた。
・本丸公園で影人間の若者を見て
「誰も、あの人に気付かないし、気にも留めてない。突然、全ての人から忘れられちゃうなんて…考え様によっては、死ぬより怖いわね。」
舞耶にとって、忘れられることは死よりも怖い
・時間城にて
「確かに、人は過去の呪縛から逃れられないかも…でもね、私はどんなに辛くても、過去があるから未来もあるんじゃないかって思う。」
過去に呪縛されている自覚がある。
・3-1教室にて
「自分の理想が何なのか、その考え方は人によって違うし…違ってていいと思う。」
「だけど私は、生きるって理想に向かって突き進む事だと思う。自分の生きる意味を知る唯一の鍵…それが理想なんじゃないのかな…」
自分の生きる意味を知る唯一の鍵=理想に向かって突き進むが舞耶の価値観。
・サトミタダシ平坂店にて
「誰にだって、人に言えない悩みぐらいあるものね。他の人から見れば些細な事だけど、本人にとってはとても辛い事だったりして…」
忘れられるのは死ぬより怖いのことでしょうか
・「死んだっていいもん。」と簡単に言うイシュキックに対して
「そんな…そんな簡単に、死んでもいいなんて口にしないで!」
「今いる環境も、将来もどう変わるかは、自分しだいんだから!」
「大した努力もしないで、死ぬなんて口にするのは子供の証拠よ!」
後の影舞耶の台詞「お前は、死にたがっているはずなのに…」を対照して読むと、自分の中の「死んだっていいもん」な思いを認めたくないから、イシュキックの言葉に激しく反応する、
ネガティブな思考の舞耶の口癖が「レッツ·ポジティブ·シンキング!」のように。
岩戸山イベント後
・アラヤ神社にて
「私は…本物なのかな…私の方が、噂で生まれた存在かも知れないでしょ?」
自分という存在感の喪失
・豪傑寺イベント
住職の台詞
「夢は、人を豊かにもすれば、その身を滅ぼすこともある。まこと人間は、業の深い生き物よ。」
夢(理想)は、人を豊かにもすればその身を滅ぼすこともある。
・カラコル入口イベント
藤井の死を前にして
「夢に生き…夢に死す…止めちゃいけない…止められないって…わかってるけど…」
「これじゃあんまり…ユッキーが可哀想だよ…こんな想い…お父さん…」
頭では父親の生き方を理解しようとしても、夢を追った父親に訪れた結末については受け入れきれなかった。
・ムー大陸にて
「自分の夢を追って…そのまま消えてしまう…男の人って…」
・サトミタダシ港南店にて
「私の父さん…藤井さんとよく似てた…記者という仕事に…ううん、夢に誇りを持ってた。そして…」
・人間をイデアリアンにする事が人類の進化と信じているジョーカー(淳)に対して
「違うわ、淳クン!夢は与えてもらうものじゃない!」
「自分の力で叶えてこそ、価値があるの!!人が進化を望むなら、それだって…」
「違う!!違う違う違う…!!じゃあなぜ、私たちは生まれてきたのっ!?」
自分の生きる意味を知る唯一の鍵=理想に向かって突き進むと信じている舞耶。
というよりも、信じたっかたの方が正しいかも、夢を追って死んだ父親を信じたいから。
ですが、ゆきのや淳の姿を見ると、夢に生き夢に死すという生き方に対して疑問を抱くようになったかも。
それでも舞耶は父親を信じたい。父親の生き方に意義があると信じなければならない。
父親が自分を「捨てて」まで夢を追って死んでいった、その死に価値を見出さなければならない。たとえそれが住職の言葉「夢は、人を豊かにもすれば、その身を滅ぼすこともある」通りであっても。
・天蠍宮
「死んだ人は、生き返らないわ…死に、再生なんてない…」
・金牛宮
「これから自分と戦おうっていうのに、随分リラックスしてるみたいね、リサ…」
「これもみんな、淳クンと栄吉クン…そしてキミのおかげ…いつ私がいなくなっても、大丈夫だよね。」
私がいなくなっても、もう大丈夫。
神殿イベント後
・かおりにて
「岡村先生は、ずっと鳴羅門石を監視してたのね…一体どんな想いで、10年間もあの石を見守り続けてきたのかしらね…」
イデアル先生も大切な人を失い、その人への想いに囚われ続けた人なんだなと舞耶の台詞。舞耶もまた、死んだ人への想いに囚われ続けた。
・カンの間にて、過去の自分と父親を見て本心を露呈した後で
「ご…めん…大丈夫だから…私…大丈夫だから…」
すごく辛いけど、周りは年下の子ばかりだから無理矢理強がって見せた
・カンの間にて、達哉たちを前にして
「私…お父さんと同じ職業に就くことで、お父さんを超えようって…思ってたのかもしれない…」
「お父さんは、自分の夢を追い続けて死んだわ…戻ってきたのは、これだけ…」
「だから私…お父さんのできなかった、家庭と仕事を両立させる、立派なジャーナリストになりたかった…」
「ローランサンの「鎮静剤」って…知ってる…?」
「寄る辺無い女より哀れなのは 追われた女…追われた女よりもっと哀れなのは 死んだ女…死んだ女よりもっと哀れなのは 忘れられた女…」
「私も…みんなが、本当に私のこと忘れてしまっていたら…ここにはいなかったかもしれない…」
・カンの間にて
「なんか…ようやく、居場所を見つけたのかな…10年かけて、ペルソナが導いてくれた、私の居場所…」
ようやく…という程、これまで自分の居場所を感じられずに生きてきたよね。
・コールドスリープ部屋
「結局この人も、自分の過去の想いに縛られていたのね…可哀想な人…」
「死んだ人間は永遠…か…でも、それで残された人が不幸になるのなら…」
・ラスト
「私…忘れられる…より…もっと…哀れ…な…女が…わかった…わ…
それは…人を…縛る…女…
みんな…私のことは…早く…忘れなさい…」
対照して読むと、コールドスリープ部屋の台詞は「死んだ人間は永遠…か…でも、それで残された人が不幸になるのなら…(忘れられる方がマシ)」の意味だと思う。
それでラストの「忘れなさい」につながる。
10年中、自分の居場所を感じられずに生きてきた舞耶にとって、自分の一生は父に縛られていた一生
自分もいつか夢を追ってそのまま消えてしまうかも知れない。
だから達哉たちを縛る女にたりたくない、だから「私のことは早く忘れなさい」と。
それでも、最後まで父親の生き方を信じていたいから、最後の言葉は誰にも自分で夢を叶える権利があるでしょうね。
舞耶関連は罪の一番暗い部分でまさに月の裏側、正直彼女のあの状態では、罪の子供たちではどうすることも出来ないと思います…
(達哉の「泣きたい時には、泣けばいい」が唯一の救いですが、あれだけでは足りないよね…)
子供たちが彼女を神聖視すればするほど、舞耶は孤独に苛まれる、身を寄せれば寄せるほど、舞耶を傷付けてしまうのです。
それに、多分カンの間まで、彼女は子供たちと一緒にいる自分を許せなかった。
カンの間の台詞「なんか…ようやく、居場所を見つけたのかな…」は金牛宮「いつ私がいなくなっても大丈夫」の後だから、舞耶の考えも、少しずつ変わっていくのかもしれません
そう、多分罰の達哉の「俺はここにいる資格の無い人間なんだ」→「俺は…ここにいていいのか…?」とまったく同じパターン
しかし、あまりにも遅かったみたい。
大事なことなのでもう一度言います、舞耶が本当の自分を見せてくれるシーンはカンの間で素の感情を爆発させた時、岩戸山の彼女は嘘をついていた。
余談ですが、昔同士さんと雑談した時こんな会話があったんです
同士さんの意見『夢を追って死んだ父親に対して葛藤を抱えている舞耶は、「夢」に拘ってるから子供たちに「夢を持つこと」の大切さを説かれました。子供たちにとって、それは生きる希望となりましたが、ある意味、「普通に生きる」選択肢を失いました。それを考えると、もし舞耶が子供たちに対し「生きる意味を知る唯一の鍵=理想に向かって突き進む」ではなく、「当たり前のことを当たり前のように行うことの大切さ」を教えたら、罪の結末は、また違うかもしれません』
この考えにはとても同感
舞耶の父の声「いいかい、舞耶…記者という仕事は、世の中に必要とされる、誇りある仕事だよ…」
舞耶「だから私…みんなに夢を伝える記者になるの…」
これを見ると、そもそも舞耶が記者になるのは、みんなに夢を伝えるではなく、他人に必要とされたいから記者を選ぶのではないでしょうか。
「みんなに夢を伝える」ことは、夢を追って死んだ父親に対して葛藤を抱えて舞耶なりの父の生き方を理解しようとする方法。
カラコルイベントの後のビキニラインにて、舞耶はこんなことを言いました
「生きる意味なんて、言葉にしようとするから難しいんじゃないかな? きっと本当は、とっても簡単な…当たり前の事なんだよ。」
「それでみんな本当は、とっくにそれを持ってるの。だけどそれに気付いてないだけなのよ。…大切なものは目に見えないから…」
とっても簡単で当たり前の事というのは、「当たり前のことを当たり前のように行うこと」かもしれません。だからこのセリフがあったんです。
そしたら今までは気付いていないものが気付く、罰のラストソングの名前通に「Change your Way」(今の自分を変える)もできるかもしれません
この言葉は罰の達哉にそのままあてはまることが出来ます、でも罪の舞耶には変える機会がなかったです。
あと、10年前の舞耶はまだ13歳、13歳の子供には「当たり前のことを当たり前のように行うことの大切さ」を悟ることは無理だと思います。P4で言えば、子供たちは名探偵の如く殺人が起こる前犯人を阻止するのと同じように無理です。
異聞録、罪罰に関してのキャラは外見だけでなく内面も細かく設定してあるのでよりリアルにキャラ立ちしてるんでしょうね。コンタクトの掛け合いにしても、成立したり不成立になったり人間関係の難しさを感じさせられるし。
ここでP3、P4と比べると、そういうリアルさがP3、4では少ない気がします。
P3・4の人間関係は、例えをすると太陽系(主人公が太陽)で、異聞録、罪罰の人間関係は、例えをすると網目状。ユーザーの選択とはいえ、最終的に3・4の主人公はみんなと仲良くなってみんなの悩みを解決していく。異聞録、罪罰だと、達哉は舞耶、ゆきのの悩みには無力、舞耶はパオフゥ、克哉の悩みに何もできません。
罰の達哉も、まさになんでも自分だけで解決しようとする人。
しかし一人の力で解決できることには限界がある、それを分かる時、彼は人として成長していた。
それについてはまた、別の機会でお話しましょう。
まとめてみると、天野舞耶というキャラの魅力はなんでしょう?
舞耶の魅力は人間としての弱さと本性の優しさだと思います。
彼女は繊細な嘘つきさん、でも、人を傷つける為の嘘ではなく人を傷つけたくない為の嘘です、打算がある、けれど打算はない。。
その誰でも一度ある「強がり」的な部分は、愛しくてなりません。なぜなら私たちは誰でも完璧超人にはなれないから。
人の弱さを受けいれることは、自分の弱さをも受けいれます。舞耶の弱さを愛することは、人間の弱さを受けいれることと同じ。
最後は罰のカクテルの例え(私の中では五本入りのセリフ)を引用します
二次元で聖人キャラ、良い人キャラ、完璧キャラを作り出すことはとても簡単なこと、ありえない程度のお人好しにすればいいです。しかし人間としての「打算的な部分」、「強がり」、「弱さ」を体現するキャラは本当少ないんです。
だから舞哉もエリーもうららもゆきのさんもリサも、みんなカクテルのように味わいを持つ、カクテルのような美しい。